ケンタロウ中年の事件簿 「松屋事変」
2017/03/20
昨日のお昼、お弁当がなかったのでそれはそれは久しぶりに松屋の牛丼をお持ち帰りしようと配達の途中に自由が丘にある松屋に寄ってみた。
店内には会社員らしき年配の方が2人と、学生だろうか、若者が1人黙々と牛丼を食べている。
食券機の前に進むと、久しぶりに相対するそいつはバージョンアップしてタッチパネルになっていた。
画面には
「店内」と「お持ち帰り」
の2択が表示されている。家に帰って食べるつもりの私は迷わず「お持ち帰り」を選択する。
すると画面には、大まかなジャンルごとに「牛めし」や「カレー」など、6種類程度の選択肢が現れる。
…やばい… そういえば何を注文するのか何にも考えずにこの場に立ってしまった…
後ろに若者が1人並んだ気配を感じながら静かにテンパりだす。
ぐずぐず迷っていて後ろの若者を待たせてしまっては申し訳ない。
後から考えてみればこの時にさっさと
「迷っているので先にどうぞ」
ということができればこの後の私の心のうちで勃発する小さな騒動は起きることもなかったのだろうが、そんな選択肢すら私の頭からは吹き飛んでいた。
食券機の威圧感によるものか、それとも「行列に並んでいる私が先にメニューを選ぶ権利があるのだ」などと、矮小な権利意識が私の心を縛っていたからなのか。
普段から松屋によく来ているのであれば、どんなメニューがあるのか大体わかっていそうなものだが「松屋で牛丼でも食うか」くらいの考えでいた私は、テンパって普段の10分の1くらいに小さくなってしまっている視野でかろうじて確認できる「牛めし」にタッチする(というより、ほかの選択肢を選ぶことができるということすら忘れている)。
すると、画面にはトッピングを加えた様々な「牛めし」のメニューが並ぶ。
記憶のかけらにかすかに残っていた「ねぎ玉牛丼」のおいしさを思い出しながら(←そもそも「ねぎ玉牛丼」は「すき屋」のメニューである)、画面に表示されているねぎと卵が乗った牛めし(「ネギたっぷりプレミアム旨辛ネギたま牛めし」というらしい)にタッチした。
もうたくさんだ。メニューは選び終わったし、もうこれ以上、人を待たせている罪悪感にさいなまされるのはつらすぎる。はやくお金を払って、この罪悪感から解放され、牛丼を手に入れて家へ帰りたい。
帰ろうよ。僕には帰れるところがあるんだ。。。
と思ったかどうかは覚えていないが、テンパった状態の私は早く会計を済ませようと、画面上に必死で「会計」のふた文字を探す。
しかし。
どこを探しても「会計」や「お金を払う」といった表示がされていない。
この時の私の頭の中では「商品を選ぶ→選び終わったら会計ボタンを押す→合計金額が表示される→金額払う」の図式が出来上がっている。「会計ボタン」を押さなければ、料金が払えないではないか!!
…どうすればいいのか!!
視線が画面の上を隅から隅までをさまよう。
心拍数が上がる。喉が乾いてくる。
後ろの若者の「早くしてくれんかな、このオッサン」という思念が背中越しに伝わってくるようだ。
わからん…
本当にわからん…
ただ機械の前にボーっと突っ立っていては、後ろに並んでいる人たちにも悪い。
お昼時ということもあって、私の後ろには先ほど並んだ若者のほかにも数人の列ができている。
仕方がない。恥を忍んで、聞こう。
後ろの若者に、聞こう。
こんなことを突然聞いても、嫌な顔せずに教えてくれそうだし。
どうせ一生会うことももうないだろうし。
そうさ。恥ずかしいのは一瞬だけさ。
思い切って振り返り
「あの、すいません。選び終わったんですけど、これってもうお金入れちゃっていいんですかね?」と、聞いてみると
「あ、はい。ココにお札を入れるとココからお釣りがジャラジャラって出てくるんですよ。」
と、わざわざ擬音まで入れてお札を入れる所とお釣りの出るところを教えてくれた。
…いやいや、さすがにお釣りの出てくるところぐらいわかるし!今、お金を入れてもいいタイミングかどうかが確認したかっただけだし!(←そもそも自分の質問の仕方が悪かったことすらすっかり忘れている)とか思いつつ、中途半端な笑顔で礼を言ってお札投入口にお札を入れてみる。
シューッとお札が機械に吸い込まれていき、若者の言った通りジャラジャラと音を立ててお釣りと食券が出てきた。
…なんだ… 最初から「会計」なんてボタンは無かったのか…
…ってゆーか、とりあえずお金入れてみればよかった…
様々な思いが頭の中を巡りながら混乱している私は、親切に教えてくれた後ろの若者に軽く会釈をすると、お持ち帰りを待つパイプ椅子に座り頼んだ牛丼が出てくるのを待つ。
親切な若者は店内で食事をしていくのだろうか、近くにあるカウンターに腰を下ろした。
店内に貼ってあるポスターなどを眺めながら、ふとサラダも食べたいな、なんて思ったりもしたけど、なんだかあの若者がいる前で再び食券機の前に立って、万が一、再びあたふたしてしまおうものなら、恥ずかしいやら情けないやらでそれこそ商品も受け取らずに帰りたい気持ちになってしまってもそれはそれで悲しいので、とゆーか、単純にもうこれ以上トラブルが起きてドキドキするのはまっぴらごめんなので、注文するのは諦めておとなしく商品が出来上がるのを待っていたのだった。。。。
普段から
「お年寄りが何か困っとったらいつでも助けてやろう」
なんて思っていたけれど、まさか自分が若干39歳にしてそっち側の思いをする羽目になるとは思わなかった。
それにしても貴重な体験をしたように思う。新しいシステムや機械の前で困っている人たち(お年寄りに限らず)は、かくも不安で心細い思いをしているのか。
売店やレジなど、人と相対している限りはわからなければ目の前にある店員に質問すれば正しいあり方を示してくれる。
しかし、機械というのはそうはいかない。
機械はこちらが指示するのをただ待っているだけで、細かな質問には答えてくれないし、こちらの困った気持ちや心情を「察して」もくれない。客がそのシステムを「常識的な範囲で」ある程度使いこなしてくれることを前提に居座っている。
その「常識的」から何らかの理由で外れてしまった人には、機械はなんとも冷たいものだ。
今回私は「会計ボタン」を押さなければお会計を支払う状態にならないだろう、という常識のもとに混乱していたのだが、少なくともその考え方は、すでに松屋の食券機の「常識」からは外れていたようだ。
今後何かしらの食堂や売店に入る際は、事前にネットで券売機があるかどうかチェックして、どのタイプの券売機か、タッチパネルなのかボタンなのか、どこにお札を入れてどこからお釣りが出てくるのか、もろもろ確認した上でイメージトレーニングを積んでから足を踏み入れなければならないのか。
とりあえず今晩は松屋の食券機のイメージトレーニングでもして復習しておいたほうがよかろうか。
まだまだ時代に取り残されたくない私の試行錯誤が続くのであった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
とまあ、どーでもいいような出来事を長々と続けてしまいましたが、最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
このお話は、実際にあった事柄を相当大げさに表現したもので、ほとんどフィクションに近いくらいのエピソードだと思ってください。
松屋ですこーしテンパった事件をもとに、いろいろと思うことがありましたので文章にして書き散らかしてみました。
こんな私ですが、20日で無事に40歳となることができました。
こんなワタクシですが、皆様今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。

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