取手にキリンビールあり!

2018/10/08

茨城県取手市

この仕事を始めてから、いつか行こう、いつか行こうと思ってずいぶん経ってしまいましたが、娘が幼稚園で一緒だった同級生のお兄ちゃん(小学3年生)に

「自由研究でビールについて教えてほしい」

と頼まれたことをきっかけに、この度ついに茨城県取手市にあるキリンビール取手工場へ見学に行ってまいりました!



こちらの工場見学は無料で体験することができます(要予約)。
見学は毎日実施されているそうですし、普段なかなか見ることのない工場内は見どころいっぱい、見学の最後には20分程度ビールを試飲することができて、いい体験となりました。
ただ、日曜や祝日は工場のラインがストップしているそうなので、製造の迫力を感じたい方は平日に訪れたほうがよさそうです。




もともと、キリンビール株式会社はその前身となる「ジャパンブルワリーカンパニー」という会社も含めると、なんと明治18年(1885年)にスタートしているんだそうです。

1885年ですよ。。。伊藤博文が総理大臣になった年だとか。
大日本帝国憲法が発布される4年前。明治維新も終盤に差し掛かった頃でしょうか。
調べてみたら「脱亜論」なんてのが新聞の社説に掲載されたころなんだそうです。
日本史で勉強した人はご存知かもしれませんが、脱亜論とは「アジア的価値観から脱却して西洋列強の文化を取り入れ、日本は独自に近代化していこう(でないとほかのアジア諸国のように西洋列強に分割統治されてしまうかもしれない)」といった趣旨の論説で、開国して明治時代を迎えたばかりのこの時代に初めて唱えられたものだそうです。
こういった時代背景のなか、西洋を代表する飲み物としてビールが日本で作り始められたのは当然のことなのかもしれません。

もともと「キリンビール」というのはその「ジャパンブルワリーカンパニー」が製造するいち商品の銘柄だったようで、その後明治40年に「麒麟麦酒株式会社」が創立されます。

取手工場が設置されたのは昭和48年(1970年)。
常磐線からほど近く、東京ドーム5個分以上という広大な土地を準備することができたので現在の位置に工場が設立されたそうです。
今では6号国道沿いなどに日清食品や伊藤ハムなど大きな工場が立ち並ぶ取手市ですが、キリンビールはその先駆けだったんだとか。当時は今ほど道路が整備されておらず、作られたビールは電車で輸送されていたそうで、
そのころは工場内に引き込み線があったんだそうです(現在でも工場の南側に沿って常磐線が走っています)。





見学を開始すると、まず醸造工場へと進み銅製の仕込み釜とご対面です。
工場創業時から2007年まで実際につかわれていたものですが、メンテナンスの容易さなどから現在ではステンレス製の仕込み釜にとってかわられたのだとか。

ついこの間も水筒内部の亀裂から銅が溶け出して銅中毒になったなんてニュースがやっていたのを見ていただけに、銅製の釜を使っていたなんてどうだったんだろう(狙ってないですよ!)なんて思ったりもしたのですが。。。

後日調べたところ、銅中毒の件は水筒内に酸度の強いスポーツドリンクを入れていたため銅が溶け出したことが原因だそうで、ビール製造の場合、この仕込み釜内にある液体は発酵させる前の糖化液の状態ですから、あまり関係ないのかもしれませんね。




説明を受けた後、この仕込みの工程で抽出された一番搾り麦汁と二番搾り麦汁を実際に試飲させていただきます。

この工程では麦芽に含まれるでんぷんを糖分に変換させる作業までがおこなわれ、試飲できるのは発酵させる前の麦汁ですので、運転の方や子供でも味を比べることができました。
通常、ビールは麦汁ろ過の工程で自然に流れ出る一番搾りの麦汁と、その後湯で洗い出す二番搾りの麦汁をブレンドしてつくられます。その作業で一番最初に抽出されるのが一番搾り麦汁です。

もちろんですが、一番搾りのほうが色も濃くしっかりした甘みが楽しめました。
まるで麹でつくった甘酒のような、やさしい甘みです。


一般的にビール製造では、麦芽のほかにこの工程で米やコーン及びスターチなどの副原料を添加して造られます。
以前焼酎の製造見学で教えてもらいましたが、酒類は糖分をつかってアルコールを作り出しますが、麦や芋からは糖分のもとになるでんぷんが豊富に取れないために一次仕込みでは米などを使うことが多いんだそうです。
コーンはトウモロコシ、スターチはでんぷんそのものですので、ビールを製造するにあたってアルコールを効率よく作り出すために、こういった副原料を添加するという工夫がなされてきたのですね。(コーンは粉砕されたトウモロコシ、スターチはトウモロコシ由来のでんぷん、である、とのことだそうです。自分の感覚でいうと「だったらスターチのみでよくない??」って感じがするんですケド。。。またいつか解決するための課題が生まれました。)

ところがキリンビールでは、「一番搾り生ビール」については2009年からその副原料を使用することをやめ、現在では純粋に麦芽、水、ホップのみを原料として製造しているんだそうです。
副原料を使わない分「一番搾り生ビール」を製造するためには通常の1.5倍の麦芽を必要とするんだとか。

麦芽のみで抽出され、しかも一番搾り麦汁しか使用せずに製造されるビールですから、何とも贅沢な仕様になっていたのですね。知りませんでした。

(ちなみにビールの本場であるドイツでは、1516年に発布された「ビール純粋令」とやらによって「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」と原料が定められているそうで。これをもって、副原料を使用しないビールを「本物のビール」なんて呼ぶ方もいらっしゃるようで。副原料を使うことに対し「インチキだ!」と捉えるか、それとも「日本人ならではの工夫が凝らされている」ととらえるか…この辺は、米のみを使用した純米酒と醸造アルコールを添加した本醸造酒を巡っての論争なんかも思い起こされますが。。。あなたはどう思いますか?)






そのあとで、麦芽から抽出された糖分を食べてアルコールと炭酸を作ってくれる酵母を実際に顕微鏡で見学させてもらいました。
動いているわけではありませんので子供たちもリアクション薄めでしたが、しんと静まり返った室内で顕微鏡から見えたビール造りの主役ともいえるビール酵母の映像になにか感じ取ってもらえたでしょうか?

除菌、除菌と菌類をひとからげに悪者にすることでなにかとモノを売りつけようという世の中ですが、人間のために活躍してくれる菌類だってたくさんいるんだよ、ってことがわかってくれたら嬉しいなぁ。。。


余談になりますが、近年ではビール酵母が美容や健康、ダイエットなどに効果があることが分かってきたとのことで、ビール酵母を使ったサプリメントなども販売されているそうです。気になった方は調べてみてはいかがでしょうか?






一通り製造について見学した後は、バスに乗って別棟に移動し、パッケージ工場を見学します。

…祝日だったこの日、残念ながら工場のラインはほとんど止まってしまっていましたが、一本だけ稼働していたので缶ビールが製造されていく様を見学することができました。
子供たちも興味津々で流れていく缶ビールの河を眺めておりました。




その他にも、ヴァーチャルゴーグルを利用して、流れていく缶ビールの視点から工場内の映像を楽しめるイベントも用意されていました。
持っているゴーグルの方向を変えると、ゴーグル内に映し出される映像もそれに合わせて移動してくれます。
映像のクオリティーはともかくとして、様々な角度から工場内の様子を知ることができるし、なにより子供たちはこういった「ちょっと変わった体験」が大好きですから、工場内の説明が続く間飽きさせないという意味でもこういったイベントはありがたいですね。




見学が終了すると、大人たちお待ちかね(!?)の試飲タイムです。
試飲は20分間おこなわれ、今回は一番搾り生と一番搾りプレミアム、一番搾り黒生の3種類を飲み比べることができました。

運転手だったわたしにもノンアルコールビールをいただけましたし、子供たちにもジュースが何種類か用意されておりました。

試飲しながら一番搾りにつかわれているホップも見せていただき、実際に触ったり匂いをかいだり、食べて味を見たりしました。
ホップには、ビールに苦みや香りをつけるという役割のほかにも、ビールの色のにごりを取り除いたり、泡もちをよくしたり、雑菌の繁殖を抑えるという役割などがあるんだそうです。

案内をしてくれたお姉さんも、見学中はある程度決まった時間の中で説明したり移動したりしなければならなく忙しそうでしたので、気になったことをゆっくり質問したいのであればこの時間を利用するのがいいかもしれません。

だいたい1時間半くらいの工場見学でしたが、一緒に行った大人たちも意外と楽しかったようで「またどこかの工場見学いきたいね~」なんて会話もありました(近くに日清食品の工場の看板が見えたので、そこに行けば無料でカップラーメンが食べさせてもらえるかもしれない…なんてよこしまな考えの者もいましたが)。


近年、アジア諸国に押されっぱなしのモノづくり王国日本ですが、やっぱり高品質、清潔、安全な日本の工場が元気に稼働しているのを見て頼もしく思いましたし、何より一番搾りに対する思い入れが強くなりましたね。当然のことながら。

…最近、晩酌でいつもスーパードライ飲んでてごめんなさい。


…ってコトでw

こいつぁ、しばらく待ち受けにしましょかねw

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